Can we live without FFR?
Nico Pijlsが昨年末European Hear Journalに寄せた総説のサブタイトルである。
FFRが機能的狭窄重症度の指標としてここまで広く認められるようになった背景には、PCI・DES留置自体への見直しの時期と重なったことが大きい。一旦虚血性心臓病を発症した患者においては、ステントによる治療後もある一定のリスクを伴う。その一部は、動脈硬化性病変の潜在によるものであり、一部はステント留置に伴う副次的事象によるものである。虚血を生じない病変に対する治療は、ステント留置の有益性が証明されず、DES時代においてもなお、虚血を証明することが治療方針を決定する際に重要である。
FFRは虚血を証明する他のモダリティ、運動負荷心電図、負荷心筋シンチグラムや負荷心エコー図法と比べても、枝ごと、あるいは狭窄ごとに虚血の有無を判断する際に有用である。多枝病変において、個々の病変の重症度を正確に評価し、それを合算して症例としての重症度を考慮することは、治療後の予後を予測する上で非常に重要である(Functional SYNTAX score)。FFRをガイドとしてPCIを行うことにより、ステント治療のメリットを最大限に活かし、より至的な治療結果を得ることにつながる可能性を、FAME study、FAME II studyは示したと言える。
もちろんFFRを使いこなすには、その計測手技の注意点やFFRの限界を十分識ることも重要である。急性心筋梗塞急性期の梗塞責任血管での評価や、運動誘発性冠れん縮病変の評価には、明らかに無効である。また重症左室肥大症例におけるFFRの意義も確立されていない。これらを十分識った上でFFRを使いこなすことが、ステントを使いこなすこと以上に重要である。
予後の改善を目指す機能的完全血行再建においては、もはやFFRなくしては遂行不可能とさえいえる。欧州発のこの概念を、今後は欧米、そして日本が牽引し、治療成績のさらなる向上を目指さなければならない。本総説をNicoが3大陸の連名としてくれた所以である。ぜひ現時点での知識の総括としてご一読いただきたい。
Functional assessment of coronary stenoses: can we live without it?
Nico H. J. Pijls, Nobuhiro Tanaka, and William F. Fearon
European Heart Journal Advance Access published December 19, 2012